第5章 悩みがなくなり

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 先だって小学校のクラス会があった。
 何年か前に俺のホームページをみたという男がこう聞いた。

「いまもあの日記のようなやつ、書いている?」

「昔のように熱が入らなくなったよ」

 と、俺は答えた。 そうなのだ。
 最近、発信意欲がすっかり減退してしまったのだ。

それは、発信への原動力が失せてしまったためだろう。

 これまで、書くことで頭の中を整理し、心を落ちつかせてきた。
 しかし、悲しいかな、最近は、
 心に葛藤がなく、屈折もなく、ただ、淡々と時間が過ぎていく。
 あせりもなく、あがきもなく、そして意味もなく。
 だから、書くことがない。

二月から法華経を読んでいる。

 昔なら理解できないことに悩んだろう。
 いまはそれがない。
 いらいらもなく、得たいともがくこともない。

あれほど湧き出た好奇心も枯れかかっている。

 ときめきも、どきどき感も、恋する心も、忘れかかっている。
 こんな状態に立ち至っても、それが悩みには変じない。

"元気ですか"と問われれば、"はい、元気です"と答える。

 二日つづけて出かければ疲れは出るけれど。

歳を重ねると、場面が次から次に変わり、
想像もしなかった心境に自分を置くものだ。

 面白いといえば、面白い。
 ありがたいといえば、ありがたい。

流れに逆らう流れはなく、流れるように流れていく。

   われ先に逝くことだけはせぬものと
   思ひし杭ぬけ 流れおだやか

      母の寝室であったこの部屋で  2010/6/8
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