四国遍路を結願する旅にでた。
今回は打ち残していた数箇寺をまわる。
これで八十八ヶ所すべてを巡礼したことになる。
以前にも書いたが、初めて四国にわたったのは三十余年前だ。
発心の動機はいくつかの要素が入り乱れたものであった。
若くもあり、いろいろとあったのだ。
最初のときは徳島から高知までの一週間ほどの行程であった。
その後は、休みがとれれば、行けるところまで進むと
いう打ち方に変えた。しかしそれも、
家のこととか仕事を理由にして長く中断していた。
死んだおふくろはそのことをたいそう気にしていた。
体力があれば、一度は廻ってみたいものだともいっていた。
一周忌が近づき、それまでには結願しておこうと思い立ったのだ。
三十年前に比べ、巡礼の環境も形態にも変化があった。
私自身もいまの自分に変わってきた。
一方、遍路の底に流れる精神文化は薄くはなったが残っている。
これから何回かにわけて、綴ってみる。
いま思ふ
秋のただよふ遍路道
いかにありしか過っての思ひ
ところで、昔まわった寺々や歩いた遍路道、利用した交通機関、
その行程、時期に関してもまったく記憶から失せている。
記録しておこうとの気くばりもなかった。
思い返すことがあるなど思いもしなかったのであろう。