北京再訪(4) 疲れているが

        Back      Next      トップに戻る
Flash:北京再訪 疲れているが

ご夫婦の案内で北京郊外にある植物園に行った。

園内をぬけ、背後の山をハイキングした。
空はあくまで青く、そして、高い。
空気は澄みわたり、風は心地よい。
昔の北京の街にもこんな秋空があったのだろう。

車飽和状態は大規模な空気の汚れを引き起こす。

東京で過って起きた事態を何倍かにしたようなもので、
その範囲は中途半端でない。
都市全体に排ガスの落し蓋がされている。

北京の街を一望したいと、80階の高層ビルに登った。
下界はスモッグがたちこめ、すべてがぼんやり。
市街地の北に建つ鼓楼に登ったときもそうだった。
そこからの眺望は灰色でおおわれていた。

路上では至るところでカーレースが展開される。

車間距離がほとんどない。
そこに車が横から合流する。
ぶつかるように割り込んでくる。
片方は入れまいとする。
それがあうんの呼吸で成り立っている。

車線変更も頻繁だ。

少しでも隙間があれば、左からでも右からでも入り込む。
右折車は割り込み割り込み、右端の車線に移動する。
もうそれは曲芸の領域だ。

一見、荒っぽく見えるこの光景も現代を象徴する。

このアグレッシブさが社会を成立させる。
押しのけても前に出ようとする気迫を感じる。
躊躇してては負けだ。

タクシーは稼ぎに驀進する。

田舎から稼ぎに出てきている者が多いと聞く。
運転手は金を払って車を借り、ガソリン代を自前で負担する。
物価は激しく上昇するが、タクシー料金は据置。
おのずと労働時間を長くせざるを得ない。
運転も荒くなる。

夜の10時を過ぎようとするのに地下鉄は満員だ。

仕事で精気を使いきってしまったのか、
表情が消えた顔の通勤者が無言で家路に向う。
オフィス労働者も疲れている。

発展発展で変貌した都会はうるおいもなくした。

昔の北京の空は顔を出さない。
街路樹の葉も汚れ、疲れている。
そしてなりより、人々は疲れ、不機嫌だ。
でも、なんとか頑張っている。

2011/11/9

inserted by FC2 system