熟年挽歌  7. これといって

    Back      Next      閉じる

 2月も終わり、月日の経つのははやいもの。

 さて、これといって、書くことがない。 時が坦々と過ぎていく。こんなときは昔のことでも書こう。

そう思って、今回は6年前の歌を引っ張り出してきた。

 定年退職のちょうど一年まえだった。

いつか読み返すこともあろうかと思って
歌日記をつけ始めた。

その冒頭分を書き写してみる。
そのころ、派遣みたいな仕事をしていた。


 2002/7/1 月曜

この上り坂、少しは慣れたと思っていたが、
今日はやけにじっとりとする。
昨夜から降り続いている雨のせいだろう。
定年まで残すところ一年、そのスタートにふさわしい。

いまの会社に移籍してから、ほとんどが客先での仕事。
いまもこうして客の指定の仕事場へ向かっている。

  じっとりと湿気も坂もまとわりぬ
  あと一年の勤めのごとし

 2002/7/2 火曜

中学の同級生が死んだと知らせがあった。
通夜に行った。
入退院を繰り返し、8度目のメスが最後になったとのこと。
二十のころ、よく遊んだ仲間の一人だ。
しかし、何を語り、何に興じ、何で笑い合ったか?
その記憶は消えている。
会わずにいた空白の40年は重たい。

  祭壇の写真にさがすおもかげは
  会わぬ月日の流れに沈む


 2009/2/27 金曜

あれから6年余、まとわりついた湿気も、
重たかった歳月も、いまでは、遠い記憶。
生きてきたことってなんだろう?

  時がたち過ぎにし記憶が千々に散り
  あの曇天の空にかすめゆく

Flash:熟年挽歌  7. これといって
inserted by FC2 system