麻生首相が日本青年会議の会合で言ったそうな、
「六十五歳以上の人は働くことにしか才能がない」とか。
「ところで麻生さん、あなた、働くことに才能があるの?」と
混ぜ返したいところだが、
しかし、よくよく自分をみてみれば、
「はたして自分にはその働くことへの才能さえあるのかなあ?」
と自問してしまう。
そこで一首、
働くしか能ないと
去り行く首相にいわれれば
ぢっと手をみるしかないか
それこそ働くことしか眼中になかった男がいる。
個人で事業をしている。
だが歳も六十代後半に入り、それにこのご時勢、
すっかり仕事は減った。
そんな彼、独身であることもあってか、
自己管理で日々すごしている。
壁をみれば、一週間の時間表が貼ってある。
曜日ごとにやらねばならぬ作業を割っている。
庭の手入れ日、古くなった家のこまかい直しの日、
読書の日、外出の日、食材買い出しの日、病院へ行く日、
そして予備日。
定年後は毎日が日曜日とかいわれたが、
実際にそこに身をおくと必ずしもそうとはいかないのが実感だ。
なにをしているかを明確には説明できないが、あれやこれや忙しい。
ただ、確かに思えることは、
なんでもいい、なにか新しい世界に飛び込みたいというか、
垣間見でもいい、少し覗いてみたいという欲望だ。
それは欲望というより、希望といったほうが的確かもしれない。
むかし、日々の生活に追われていたころには考えもしなかったことを
この歳になってやってみたいと思うのだ。
「年をとって遊びを覚えても遅い」かもしれないが、
せっかくこれを愉しみに働いてきたのだから、
ここはいまだからこそできる遊びに挑戦したいと思う。