熟年挽歌 14. あの人からは言われたくないが

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 麻生首相が日本青年会議の会合で言ったそうな、
「六十五歳以上の人は働くことにしか才能がない」とか。

 「ところで麻生さん、あなた、働くことに才能があるの?」と
  混ぜ返したいところだが、
  しかし、よくよく自分をみてみれば、
 「はたして自分にはその働くことへの才能さえあるのかなあ?」
  と自問してしまう。

 そこで一首、

   働くしか能ないと
   去り行く首相にいわれれば
   ぢっと手をみるしかないか

 それこそ働くことしか眼中になかった男がいる。

個人で事業をしている。
だが歳も六十代後半に入り、それにこのご時勢、
すっかり仕事は減った。

 そんな彼、独身であることもあってか、

自己管理で日々すごしている。
壁をみれば、一週間の時間表が貼ってある。
曜日ごとにやらねばならぬ作業を割っている。

  庭の手入れ日、古くなった家のこまかい直しの日、
  読書の日、外出の日、食材買い出しの日、病院へ行く日、
  そして予備日。


 定年後は毎日が日曜日とかいわれたが、

実際にそこに身をおくと必ずしもそうとはいかないのが実感だ。
なにをしているかを明確には説明できないが、あれやこれや忙しい。

 ただ、確かに思えることは、

なんでもいい、なにか新しい世界に飛び込みたいというか、
垣間見でもいい、少し覗いてみたいという欲望だ。
それは欲望というより、希望といったほうが的確かもしれない。
むかし、日々の生活に追われていたころには考えもしなかったことを
この歳になってやってみたいと思うのだ。

 「年をとって遊びを覚えても遅い」かもしれないが、

せっかくこれを愉しみに働いてきたのだから、
ここはいまだからこそできる遊びに挑戦したいと思う。

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