熟年挽歌 18.  男のロマン

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 いまの季節、なにか心落ちつく感じでいい。

昔は、峠を下っていくようであまり好きではなかったが、
そんな年齢になったということか。
ひとりこうしているのが似合う季節だ。

 ところで、
 交友力は数段、女性が勝っていよう。

昼下がりの街は女性グループで占拠されている。
熟年男の群れは華やかな街には似つかわしくない。

 それが理由というわけではないが、
 ある男、定年後は田舎暮らしをと考えていた。

いろいろ探している様子だったが、最後は、
東京から遠く離れずの場所に落ちついた。
奥方が東京から距離をおきたくなかったのであろう。
妻のライフと夫のロマンはバランスがむずかしい。

 女は犬型、よく出歩き、友と会う。
 男は猫型、ぽつんと一人。

携帯も、女性のほうが圧倒的に活用している。
私も持っているが、最近はほとんど使っていない。

 携帯で思い出したが、
 先だって、こんなことがあった。

用事があって、ちょっと出かけることになった。
携帯を持って出ようとしたら、電源が切れている。
使わないとはいえ、なにかのときに困るので、
どうしようと思っていたら、

「私の携帯を持っていったら」と妻がいう。
「その携帯、預かっておくわ」とつづけていう。

これといって隠し事があるわけではないのだが、
これにはちょっと動揺した。

 この胸騒ぎには後日談があって、

翌日、1通のメールが入った。
女性からの久々のメールだった。

  朽ちもせぬロマンばかりをとどめおき
  結婚しますのメールをたたむ

胸騒ぎもそっとたたんだ。

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