熟年からのインターネット NO.82
自己流メーリング考 第二章  1.どこにお勤め?

 「どこにお勤めですか?」の質問を受けると返事に 窮してしまいます。

第二章は自分の居場所から書き始めます。居場所とい っても、家族とか、コミュニティとかありますが、こ こでは、お金をいただく仕事のうえでの居場所に焦点 をあてます。

 私は一応、或る会社(仮にこれをS社とします)に 雇用され、S社から給金をもらっています。しかし、 そこは席があるだけで、実際に日々の仕事はそこでは していません。社員全員がそれに該当しませんが、私 が所属する部署の多く社員は、お客様のところに出向 き、そこで仕事をしています。つまり、S社とお客様 (仮にC社とします)とが契約を結び、S社の社員が C社に常駐して仕事をするわけです。通常は、数人で チームを組み、お客様のところにいきます。

最近は、対象とするプロジェクトが大規模になり、複 数の企業といっしょにそのプロジェクトにあたります。 (この連携してあたる会社をR社、T社などとします と)R社、S社、T社の者とお客様(C社)の人たち で、プロジェクトが構成されるのです。さらに、ヘッ ドとなるJ社がいて、R,S,Tの各社はこのJ社と 契約し、J社とC社との契約のもとで仕事を進めます。 実態はもう少し複雑なのですが省略するとして、各自 は自分がどこの会社に所属しているのかをあまり意識 せず、言い換えると、自分の会社のことは口にせず、 プロジェクトの一員としての意識を前面に出すよう求 められます。



さて、私の場合、どうした訳か、チームを組んででは なく、一人でいくことが多いです。つまり、私ひとり だけでお客様のところにいくというケースです。お客 様(C社)とS社とが契約を取り交わし、私がC社に 出向き、そこの人たちと仕事をするのです。最近はこ れがやや複雑になり、元請けのJ社が間に入り、S社 とJ社が契約し、そのJ社の顔でC社に伺います。

長くなりましたが、以上が私を取り巻く状況です。

 さてこうなると、自分はどこを勤め先にしているの かと時々思ったりします。それはそれでいいのですが、 自分の居場所があやふやになってきます。どこも中途 半端で、どっかりと座る場所が定まらないのです。ち ょこっと机に座っているといった感じです。それに一 つのプロジェクトは半年から2年ほどです。いろいろ なプロジェクトを転々とします。やっと慣れたと思う と終りです。ときどき会社に戻るのですが、S社では 浦島太郎状態です。「あの人、誰?」といった雰囲気 さえ感じることもあります。



 新しい客先に初めて伺うときも複雑な気持ちです。 少し打ち合わせをして、用意された机に座っても、 周りはまったく知らない人たちで挨拶もありません。 ここでひとり仕事をしていくのだと覚悟はするもの、 ちょっとおセンチな気分にもなります。そとに目を やれば、夕闇が迫り、部屋のガラス窓には自分の姿が ぽつんと映ります。

  世話になる会社の机もほぼ決まり
     見るガラス窓の向こうに我れ

 このような勤務のスタイルをとっていると、自分と 組織との関係を考えてしまいます。というより、組織 体そのものから浮遊してしまうのです。どこにも属さ ない自分と対峙するのです。そのときの所在のなさは、 ひとりよその会社にいるという事象だけでなく、会社 などという概念を飛び越えた「われ、いづこの空間に おるか?」といった疑問から発するものです。

自分の居場所が定められぬ戸惑いから、つまり自分の うちからの心の問いになるのです。しかし、ほんとう の寂寥感はそのあとにやってくるのです。




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