熟年からのインターネット NO.92
第五章 メーリングリストの風景

  1.高速道路と囲炉裏

つかみどころのないものを絵にしてみるのが好きです。

 メーリングリストに出会ったとき、高速道路の光景 が浮かびました。

それは初めて高速を使ったときのようです。ぐるぐる まわって本線に出たものの合流できません。やっと乗 れたと思ったら、そのスピードについていけません。 追い越し車線はぶっとばす車です。どんな人が運転し ているか皆目わかりません。

 熟年メーリングリストを始めたのはこんな折でした。

囲炉裏を囲んで車座になり、のんびり語り合いたいも のだと思ったのです。はじめるからには、皆が全員の 顔がみえるMLにしようと思いました。全員が揃った 段階で自己紹介の投稿をお願いしたのも、皆が同じス タートラインに立ってもらいたかったためです。そこ に描いた風景は、初対面ながら、古くからの友のよう に語り合う囲炉裏ばたの絵でした。

 開設するとアナウンスしたものの集まるかと不安で したが、予想以上の人数のMLになりました。

人の集まりは、飲み会でも、仕事のチームでも7名あ たりが最適とつねづね思っています。七人の侍とか、 七変化とか、7つは多様であって、それでいて各自の 差異が識別できる頃合いの数です。この人数なら全員、 名前も自然に出てきます。話題もいろいろに、そして 程よく広がります。7人を越えた構成を、例えば職場 を想像してみてください。長と肩書きがつく者が現わ れます。組織カリスマが必要になります。それに目的 を持たねばなりませんし、目標も設定します。メンバ ーをまとめるには共通のテーマも必要になってきます。

 30名を越えたMLに私はどう対処したらよいかと 困惑しました。

カリスマ性もありません。なにもできなかったのです。 方向づけもできず、無責任にそれを放置したのです。 「思っていたMLとは違う」とか「リードしてくれる ものと思っていたのに」とメールが届きました。そし て、何人かの方々は去って行かれました。

囲炉裏の周りには座りきれず、土間にたたずんだり、 縁側に座りこんだり、庭をぶらぶらする、そんな光景 が映ってきました。それでも何もできず、膝を抱えて うずくまってしまったのです。

 それが不思議なものです。どれほどの時間が流れた でしょう。ふと立ち上がり、周りを見ると、そこには まったく違う風景がひろがっていたのです。




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