パックツアーでスペインへ
第6章 戸惑いのコルドバ

コルドバ観光といえば、メスキータだそうだ。

事前の知識はイスラムの建物が残っているといった程度だった。
それほど関心もなく、是非とも行ってみたいと思うほどでもなかった。
そのコルドバに観光2日目は連れて行ってくれた。



        Back      Next      トップに戻る
       

コルドバの旧市街地に入る。

そこは観光客で埋めつくされている。
昼食のあと、観光定番コースをぐるりと歩く。
メスキータには歴史が織り重なり、それが見どころだ。
見ておくべき価値は十分にあるとの思いに変わる。

訪れることで好奇心は生まれるものだ。

ローマ人がこの地を征服し、神殿を築く。
6世紀、西ゴート族が侵入し、王国をつくる。
ここにキリスト教教会を建てる。
8世紀になると、今度はイスラム教徒がイベリア半島に侵攻してくる。
コルドバを制すると、ここにイスラム寺院モスクを建設する。
北に逃げたキリスト教徒は半島奪回の戦いを始める。
このレコンキスタと呼ばれる国土回復運動で半島を奪い返す。
主となったキリスト教徒は、モスクのなかにキリスト教会を建てる。
このカテドラルへの改造建設は1523年に始まり、1750年に完了する。

これが現在に残るメスキータだ。

二重の馬蹄形アーチ構造のモスク内を見てまわる。
イスラムの宗教的、芸術的残照がみてとれる。
ローマの時代の芸術文化の影響も残る。

だが、なにかおかしい。

それはモスクのなかにキリスト教のカテドラルがあることだ。
無理やり組み込んだという違和感だ。
イスラムの遺産を残してくれたことはありがたいが、
キリスト教会への改造はあまりに無謀だ。
イスラム空間と調和していない。

これがメスキータで感じた居心地の悪さだ。

カテドラルは高く、高くと、そそり立つ。上昇指向の建築様式だ。
それが威圧感をもって迫ってくる。
イスラム礼拝空間にもそれは襲いかかる。
ここはメッカに向かって拝礼する場であった。
その秩序だった幾何学的イスラム空間構成をカテドラルはぶち壊す。
カテドラル化のためにモスクの出入り口を壁でふさいでしまった。
このことも気にくわない。
本来開放的であった空間を閉ざし、光りを上部からのみ入れようとする。
開かれてこそ、厳粛で聖なる拝礼空間だ。
それを台無しにしてしまった。

旅は思ってもみない体験を与えてくれる。

イスラム教もキリスト教も根源は同じなのだからと思っていた。
だが、メスキータのなかに立って初めて、その異質さを感じる。
旅からは予期していなかった収穫が得られるものだ。

パックツアーでスペインへ  2012/4/20

inserted by FC2 system